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広島での思い出は私の宝物 |
第10回 時の過ぎ行くままに
あんなに寒い日々を送っていたのに、この頃
タンスのダウンジャケットをかさ高い、と感じたり、
ダークな黒や茶より、パステルカラーが新鮮に写る
自分がいます。
そうです、そんな時、「あぁ、春が来るのね!」
という幸福感にひたり、目の前が明るく開けるのを
実感するのです。
動物たちも冬ごもりから目を覚まします。猫はもう
いち早くその気配を感じ取り、朝から大騒ぎです。
春といえば、別れと出会いが同時にやってくる時期です。
私もCATで2年間教えてきた生徒たちが巣立って行く
寂しいときなのですが、この春、最も辛い別れを目の前に
しています。月に1度、2〜3日必ず歌いに行ってた
広島のホテルグランヴィア広島がこの3月いっぱいで
大阪から呼んでいたミュージシャンを打ち切るというのです。
10年一昔、といいますが本当に私の歌手としての歴史を
ずっと見守ってきてくれた広島ライフでした。震災の後は
飛行機で通って一週間歌ったこともありました。
ドレスを着用できる数少ないスポットでもありました。そして、
のどを気遣う私のために加湿器を部屋に常備していてくれた
り、いつもスタッフが明るく迎えてくれ、居心地抜群でした。
父の出身地ということで親戚も沢山いて、第二の故郷だったのです。
子供のいない叔父と叔母への孝行で月一度の会食も楽しみの一つ
だったのですが叶わぬ夢となりました。
楽しい思い出はつきませんが、どうしようもありません。
人間は飛躍するとき何か大切なものを捨てなければならないと言いま
す。辛いけど乗り越えなければならない事もあるのですね。
でも私は広島での素晴らしい思い出は一生わすれないでしょう。
触れ合った人々の暖かさ、優しさ、心に刻んでおきます。
時が過ぎても私の皆さんへの想いは消えないでしょう。
というわけで、今回は映画「カサブランカ」より
あの渋い一曲、As time goes byを選んでみました。
【訳】
月の光や恋の歌はいつの日も時代遅れにはならない。
時の流れに身を任せても、大切な人の心は失いたくないですね。
2001年桃の節句 中谷 泰子
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